世界切手国めぐり

スリナム

スリナム ─世界切手国めぐり─

●…ギアナ高地に抱かれて

 南米の北東部には、かつてブラジルとの国境、ギアナ高地を背に、大西洋に向って英国、 オランダ、フランス の三つの植民地が並んでいました。東端の仏領は今もフランスの海外県ですが、英領は独立してガイアナに。

そしてオランダから1975年に独立したのがこのスリナムです。面積16万平方`b、北海道の2倍以上もありま すが、人口はわずか44万。 しかし、住民構成は大変複雑で、黒人とヨーロッパ系の人々との混血やインド系の 人々が、それぞれ3割前後を占めています。マレー系の人々も少なくありません。そのためもあって、独立後は ずっと政情不安が続いてきました。

 もっとも、首都パラマリボなどの中心街は、カラフルな服装をした人人でにぎわい、オランダの残したコロニアル風の建物も多くみられます。人々のオランダに対する感情も、例えば凄惨な独立戦争を闘い抜いたインドネシア の人々と違って、おだやかなものがあります。

●…ボーキサイトとアルミナ工業

 スリナムの経済を支えている最大の資源はボーキサイト。主に海岸付近に分布する多くの鉱山で採掘したも のを、 ギアナ高地からの豊かな水力電気によって、アルミニュームの中間原料アルミナに精練し、輸出していま す。この様子は切手でも何回か紹介されました。

 1円玉や窓のサッシ、ビールやジュースのカンから飛行機に至るまで、そして時には切手の素材の一部にもな るなど、現代の生活に欠かせないアルミニュームは、電解精練するために大量の電力が必要なことはご存知でしょう。 安価に水力電気の得られるスリナムは、この点大変恵まれているのです。こうしたモノカルチャー経済の ために、アルミニュームの国際価格の動向が、この国の経済に直接影響を与えがちですが、近年は比較的安定しています。

 スリナムの国民は、前述のように人種的にも民族的にも大変複雑ですが、これはかつて、このボーキサイトの 採掘やアルミナの精練工場などのために、世界各地から労働者が大量に集められたためでした。彼らは契約期間が終わっても、この地に定住するようになったのです。

●…切手の特色

 首都の街角などで、ふとオランダのムードを感じることもありますが、何といってもこの国の切手には、今もオランダの香りが漂っています。 独立後も、ほとんどの切手がオランダで印刷されていることや、通貨単位がオラン ダと同様、ギルダーのためかもしれません。もっとも、インフレの亢進で、今ではオランダ・ギルダーの10分の1 以下の価値しかありませんが。

 日本では、植民地時代にこの国を「オランダ領ギアナ」と呼んでいましたが、切手の国名表記は1873年の一番切手から一貫して《SURINAME》です。ただし、英語での表記は《SU-RINAM》ともなります。

 独立前は、オランダやオランダ領との共通図案が多くみられたことも一つの特色ですが、やはり、オランダと同 様、毎年児童福祉のための寄付金つきの切手が独立後も発行されてきたことも、もう一つの特色です。しかし、 残念ながら1994年以後は中断されています。
 一般に、最近の発行政策は、やや積極的になってきましたが、隣国のガイアナなどと比べると決定的に健全と いえるでしょう。


《クレオール切手》の可能性

 小なりとはいえ移民の国スリナムには、世界の各地から多様な民族がそれぞれの文化を持って移り住んできた。移民たちの文化は世代を重ねるにつれ、 さまざまに混淆したが、とくに目立つのが言語である。国民の3分の1以上を占めるヨーロッパ系とアフリカ系黒人との混血の人々クレオールは、 日常使用する言語として《スラナン語》と呼ばれる独自の混合語を発達させてきた。

 クレオールは元来、カリブ海やインド洋などの仏領植民地で発達したフランス語とアフリカ系言語との混合語の総称であったが、 現在ではその意味が拡大され、フランス語以外のヨーロッパ諸語との混合語を含めるばかりでなく、混成された文化一般をも指すようになっている。

 とくに文学や美術をはじめ、料理などの分野でも「クレオール」は積極的に評価され、大変魅力のある領域となっている。 そればかりか、最近では人文地理学はもちろん、比較文化や思想史などの学術用語としても定着し、多方面にわたる研究が進められるまでになった。

 フィラテリーの世界には、まだ、《クレオール切手》などのテーマは見られないし、収集分野としても確立していないが、いずれ海外の切手展などで注目されるに違いない。 この知的で奥の深い収集領域に、差し当たり《JAPEX》あたりで挑戦される方はいないだろうか。

切手 移民を描いた絵画。(1998年) スリナム
インド系移民。移民を描いた絵画。(1998年)


スリナム 地図  スリナム共和国 Republic of Suriname
 面積:16万3265ku
 人口:約4万人(97年)
 首都:パラマリボ(17万人)
 住民:クレオール35%、 インド系33%、インドネシア系16%、黒人10%ほか。
 言語:公用語はオランダ語。土着のタキタキ語が広く使われるほか、スラナン語、
    英語、ヒンドゥー語、インドネ シア語など

 宗教:ヒンドゥー教28%、プロテスタント25%、カトリック23%、イスラム教20%等
 資源:ボーキサイト
 通貨:スリナム・ギルダー

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