世界切手国めぐり

マーシャル諸島共和国

北太平洋に浮かぶ悲劇のサンゴ礁の島国 マーシャル諸島
●…環礁の共和国

 太平洋の真中を南北に走る日付変更線の西側、そして赤道以北に散在する小さな島々の世界がミクロネシア。マーシャル諸島共和国は、その南東端に連なる環礁群から成っています。第二次世界大戦後、米国による信託統治下で、1979年に先ず独立をめざす自治政府が発足。その後、多くの曲折を経て、結局、米国に軍事権(防衛権)を与える見返りとしての財政援助を条件に、米国との「自由連合」の国として、1986年に独立しました。

 それぞれの環礁は、波の静かな礁湖をかかえていますが、ここは魚類や貝類の宝庫。人々が住むのは、この礁湖を縁取るように連なる低平なサンゴ礁の小さな島々です。首都マジュロもこのような環礁の中の島の一つ。《Majuro》は、さしずめ“大島”というところでしょうか。ここには小型ながら、国際空港もできています。


●…ドイツ、日本、そしてアメリカへ

 マーシャル諸島は、他のミクロネシアの島々と同様に、20世紀に三度も宗主国が変わりました。これらの島々は、いずれも16世紀の大航海時代にスペインによって発見されましたが、ほとんどそのまま放置。オセアニア分割が最後の段階に入った19世紀にドイツがこの島々を領有し、ココヤシの栽培などをはじめました。ココヤシからとれるコプラは、この島々にとってのほとんど唯一の産物。コプラからは、石けんやマーガリンの原料となるヤシ油がとれます。

 しかし、ドイツの領有は第一次世界大戦であっさり終わります。“日英同盟の誼”で、英仏の連合国側に立って参戦した日本が、マーシャル諸島ばかりでなく、ドイツ領ミクロネシアの主要な島々を占領し、やがてベルサイユ条約で、日本による国際連盟の委任統治領となったからです。

 日本はこれらの島々を「南洋群島」と呼び、コロールに南洋庁をおいて統治をはじめました。マーシャル諸島の中心マジュロ島は、発音が近いこともあって、「目白島」などとも呼ばれ、日本語の教育が行われました。今でも60代以上の人々に日本語の達者な人がいるのはそのためです。


●…第二の“被爆国”

 太平洋戦争でほとんど戦禍を免れたマーシャル諸島に大きな悲劇が訪れたのは、むしろ戦後のことでした。「南洋群島」が米国による国連の信託統治領となったため、米国はマーシャル諸島のビキニ環礁とクリェゼリン環礁を中心に、原水爆の実験を繰返すことになったからです。住民は故郷の島を追われ、遠くの小さな島に移されます。その頃の核実験は最近の地下実験と違って、直接大気中で行うものでした。そのため、実験のたびごとに強い放射能を帯びたサンゴ礁などのこまかいチリが広い海域に降り注ぎます。日本のマグロ漁船第五福竜丸が被爆したり、大量の放射能を帯びたマグロが水揚げされたのもこの頃のことです。

 マーシャル諸島の人々は、水の乏しいサンゴ礁のために、飲み水を天水に頼ることが多く、放射能の影響がとくに心配されました。放射能による健康上の障害を訴える住民が今も少なくないと言われています。
 実験場となった島々にも、ようやく緑が戻りましたが、残留放射能が強く、住民の帰島は今も認められていないのです。


●…切手の変遷

 マーシャル諸島の一番切手は1897年、ドイツの普通切手に島名を加刷したものでした。正刷切手は1899年。旧ドイツ植民地に共通の、皇帝専用船ホーヘンツォルレン号を描いた切手に《MARSHALL−INSELN》を挿入したものです。

 日本の統治時代には、もちろん日本切手が使われました。

 米国の信託統治下では、米国切手が用いられていましたが、1984年に自治政府と米国郵政公社の間で協定が結ばれ、独自の切手が発行されることになりました。熱帯の海洋生物や島々の生活を描いたもののほか、とくに90年代に入ると、第二次世界大戦を描く壮大なシリーズや著名な芸能人を描くブロマイドのような切手もみられるなど、いささか乱発気味です。 しかし、コプラなどのほかには見るべき資源のないこの国にとって、切手はかけがえのない“資源”。より魅力的な切手の発行を期待したいものです。


■北マリアナ連邦の切手

太平洋戦争では激戦地となり、戦後は観光に生きるサイパン島やロタ島などの旅先から、せっかく懐かしい海外の収友に出そうとした絵はがきに、米国の見なれた切手を貼るように言われ、いささか味気無い思いをされたフィラテリストは少なくあるまい。
 《北マリアナ連邦 Commonwealth of the Northern Mariana Islands 》などというオーストラリアなみの堂々たる連邦国家名をもちながら、この国は、実は今なお外交権のない米国内の自治国なのである。もちろん、独自の切手はない。
 一九八六年に、住民投票の結果、多額の財政援助の得られる米国の自治領となったためである。米国としても、冷戦下で島々の戦略的位置に着目し、援助をしてでもその領土内にとどめておきたかったのであろう。

 しかし、他のミクロネシアの島島が曲がりなりにも次々と独立した現在、《北マリアナ連邦》でも一部に独立の気運がみられるようになった。グアムなどと共に米国の《マリアナ州》となるか、あるいは自立した独立国への道をとるか、21世紀の早い時期に、島の人たちは再度選択を迫られることになるかもしれない。

マーシャル諸島共和国 地図  マーシャル諸島共和国 The Republic of the Marshall Islands
 面積:180ku
 人口:5万6千人(95年)
 首都:マジュロ(1万2800人)
 住民:カナカ族、およびカナカ族と米国、ドイツ、日本人との混血。
 言語:マーシャル語、英語。
 宗教:多くはプロテスタント。 
 資源:コプラ、魚。
 通貨:米ドル
国旗
 国  旗
世界の鳥25種連刷シート
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色鮮やかな世界の鳥を描く。

ソライロフウキンチョウ、オウボウシインコ、ウチワハチドリ、キイロムクドリモドキ、サンショクフウキンチョウ、カンムリハワイミツスイ、ヒメアオバト、ヘキサン、チャガシラフウキンチョウ、マミジロミツドリ、ミツスイ、オニオオハシ、アマサギ、クビワヤマセミ、アカノドボウシインコ、アメリカムラサキバン、チャゴシエメラルドハチドリ、コブバト、ゴシキノジコ、コウライウグイス、ヒムネオオハシ、クラハシコウ、ベニキジ、ホオジロカンムリヅル、ヒメアカクロサギ。
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